Copa Sudamericana 2016コパ・スダメリカーナ 2016

2016年にコロンビア国内で発生した凄惨な墜落事故から3ヵ月が経ち、前を向いて次の人生を歩もうと懸命な努力を続けている被害者がいる。シャペコエンセ（ブラジル）の一員として墜落事故に巻き込まれながらも一命を取り留めた、24歳のGKフォウマン氏だ。悲運に見舞われて右足を失った元サッカー選手が見据えているのは、どんな未来なのか。

フォウマン氏が巻き込まれた旅客機墜落事故とは、2016年11月28日の午後10時台にコロンビア国内で発生した「ラミア航空2933便墜落事故」。着陸予定の空港との間に起きた連携不足により、燃料を使いきった当該の旅客機はコロンビア国内の山岳地帯に墜落し、搭乗していたシャペコエンセの選手やスタッフらの多くが命を落とした惨事だ。この事故では、かつてヴィッセル神戸を指揮したカイオ・ジュニオール監督を初め、元セレッソ大阪＆元ジェフ千葉のケンペス、元川崎のアルトゥール・マイアなど複数の元Ｊリーガーも絶命した。

事故後、病院のベッドで意識を回復したフォウマン氏は、自身の身に起こったことを自覚して深く傷ついたことを言葉にしている。
「目が覚めて右足の膝から下がないことをすぐにわかった。切断しないと命に関わることだったのは理屈でわかっていても、サッカー選手として大切な足を失うことはとても悔しいことだった。その後チームメイトが大勢亡くなったことを知らされて非常に感傷的になり、入院先のコロンビアではずっと泣いていたよ。でもその後、ブラジルに帰国して義足を付けてもらったとき、死なずに済んだ私は今を強く生きていかなければならないと思うようになったんだ」

墜落により右足を失ったフォウマン氏が抱いた最大の願望は、立ち上がって、歯磨きをして、トイレに行くことだったという。五体満足の人なら誰もが当たり前のようにできること。それができない身体になってしまったことが、彼の心を蝕んでいたのだ。

右足に義足を付けて暮らすことになった同氏は現在、サンパウロ市内のリハビリセンターで過酷なリハビリを続けている。上半身が無事な同氏は、病室のベッドでは趣味のギターを弾くことで気を紛らわせているという。ただ、人生を狂わされる惨事に見舞われても、同氏はスポーツやサッカーを恨む気持ちは皆無だと断言した。

「私はスポーツが好きだし、以前よりも運動について深く理解できるようになった。“元プロスポーツ選手”という視点で自分自身を見ていないんだ」

担当医から運動の了承を得たフォウマン氏は現在、婚約者と暮らしながらシッティングバレーボールの練習にも興じて汗を流している。悲運の事故により五体満足ではなくなった24歳の若者は、苦難を乗り越えるための“気の持ちよう”について明るく語っている。

「あの事故で私は、人間の認識している限界を各人が頭の中で勝手に決めていることを学べた。重要なのは、自分の可能性を自分でつぶさないことなんだ。もしもあなたが優秀な頭脳の持ち主であれば、あらゆることをポジティブに考えて、今よりもっといろいろなことに挑戦できるよ」